
未来に続く環境や、次のステージを整えて
みんなが幸せになれる会社作りを目指す。
Charm / MARCH 代表取締役社長 塚本 充裕
元々、母親が美容室を経営している関係で、大学に通いながら美容師免許は取りました。
しかし美容室に就職することは考えず、当時200名くらいの社員規模の会計コンサルタント会社に就職しました。
就職して数年が経ち会社で部下も増えてきたころに、阪神淡路大震災が起こりました。
私が担当していたクライアントもたくさん被災され、経営困難になる方も多くいらっしゃいました。
私もお水や救援物資を運んだりできる限りのことはしたのですが、経営困難になってしまった一番多くの理由はお金の問題ももちろんありますが、経営者の気持ちが折れてしまうことでした。
そんな中、自分も経営者になり、困難になっても潰れない、スタッフも家族も自分も守れる会社を経営したいと思うようになりました。
ちょうどその頃、10名2店舗で経営していた母親から、これから美容室を近代化させたいので戻ってきて働かないかという声をもらい転職する決意をしました。
当時のほとんどの美容室が個人経営で、母親のお店もそうだったのですが、いい意味で師弟関係はあるにせよ、美容師のキャリアプランは、スタイリストデビュー後、独立か結婚による退職が多く、長く勤めると言うことがあまり考えられてなかったように思います。
弊社も雇用保険(労働保険)や整容国保(大阪府の組合健保)には加盟していましたが、厚生年金などには加入しておらず、逆にこういった部分をしっかり整備して、スタッフが将来について安心できる環境をつくれば、長くしっかり働けて結果的に美容室にとってもプラスになると考えました。
法人化をきっかけに厚生年金に加入し、安心して働けるためにスタッフ全員で受診する健康診断、また業務による事故やケガの保証をする保険、さらに万一のトラブルに対応する顧問弁護士なども契約するようになりました。

美容師をめざすスタッフはみんな夢をもって入社します。
しかし夢がしぼむのは美容師という仕事がつらいのではなくて、その会社やお店に自分の将来像を重ねることができないからだと思っています。
つまり未来への展望がしっかりあり、安心して働ける環境や、共に楽しく高めあえる仲間がいれば退職することはないのかなと思います。
こう考えたきっかけは、スタッフと食事をしているときにふと聞かれた「私は5年後どうなっているんですか?」という何気ない質問でした。
しっかりと5年後のキャリアプランというか、キャリアイメージを持ってもらえるようにできれば、きっともっと頑張ってくれるんだと思いました。
毎年すべての社員や外部の方をお呼びして発表する、経営方針発表会では、会社の未来とスタッフの未来イメージはしっかり話すようにしています。
スタッフの採用に対しても同じイメージをもって話をします。
一番は受け入れ体制をしっかりすること。
弊社もリクルートチームがありますが、新卒を採用することに力を入れることだけに集中するより、先輩方がしっかりと後輩を見て「辞めない会社」より「続けたい会社」を目指すことが大事と話しています。
キャリアイメージの一番具体的なモノは「言葉」で無く、実際に働いている先輩の姿です。
数年後、あの先輩のようになりたいという社員を育てられれば新人は頑張りますし、あの先輩みたいになりたくないと思われれば離職につながります。
そういった意味で、力を入れているのが「ブラザーシスター文化」です。
以前は単に新人に対して教育担当専属の先輩をつけることをブラザーシスター制度と呼んでいましたが、今では社長を含む全てのスタッフに、ブラザーシスターを決めています。
上司が部下の教育を見るという堅い考えでは無く、お姉ちゃんが妹の面倒を見るように、いい人間関係をつくりながら、無理のない「共育」の場を作っています。
これは実は教わる方より、教える「お兄ちゃん、お姉ちゃん」に効果があります。
人に教えているうちに自分が上手になることはよくあることですが、関わった後輩が成長することに喜びを感じてくれているようです。
ただ今後の事も考えて時間管理にもっと意識を持って、しっかりと人が関わった共育と、動画共育のように時間を意識した共育にも力を入れています。

もう一つのキャリアイメージですが、結婚、出産後の働き方です。
弊社の創業者が女性と言うこともあって、もともと女性が働くということには意識を置いていましたが、今では結婚や子供の有る無しに関わらず入社7年すると、働き方を申告によって自由に変更できるシステムを導入しました。
日曜日を休みにしたり、時短勤務をしたり、パートタイマーとして勤務したり、その為にオートシャンプーを導入したカラー専門店も作りました。
入社7年を今後は5年へと短縮する予定です。
また最後のキャリアイメージは自分で経営したいという働き方です。
今、私が店舗展開に力を入れているのは、経営者としてお店を任せられる人材を育成するためです。
私もいつまでもトップで正しい判断ができるとは考えていません。
会社を存続させ伸ばすためにはそのときの「旬」のスタッフが力を発揮できる環境をつくることが大切だと思っています。
今後を見据え現在の組織の力を利用しながら、しっかりと「代表」として自分の組織を作っていける仕組みを作りました。
サロン部門2、まつげエクステ部門1、和装教育機関1、飲食部門1の5人の代表がそれぞれ、あえて困難でやりがいのある「経営」という道に進んでいます。
経営者になることによって、仲間に対する考え方、利益に対する考え方、組織の未来に対する考え方が大きく成長します。
だからこの代表同士の話が私にとってたまらなく楽しいです。

美容師に限らないかもしれませんが、仕事を長く楽しく続けるためには、仕事を楽しむこと、ファンを大切にすることと考えています。
仕事を楽しむこととはよく言われることかと思いますが、実際仕事は楽しくないときもあります。辛いときもあります。
しかし、楽しいからするのではなく、仕事の中に楽しみを見つけていく!という姿勢で接してください。
仕事が楽しくないときは、全体で無く部分を見て、楽しい部分を探していく。
あと「今」楽しくないだけであって、未来は楽しくなるかもと柔軟に考えることも大切です。
楽しみを探すという習慣をつけるとかなり楽になります。
というか人生は楽しみを探すためにあるもんだと思いませんか?
もう一つのファンですが、仕事を一生懸命していると自分のことを認めて応援する人が必ず現れます。
そういう人のために頑張るともっとファンが増えます。
これはアーティストの人を見れば分かると思います。
ファンの人は報酬をくれるだけで無く勇気もくれます。
ぜひたくさんのファンを作ってください。
しかしファンをつくる一番の早道は、自分が誰かのファンになることです。
身近な先輩のファンになろうと思って接してみてください。

最後に、美容師はいい仕事と思います。
たくさん稼ぐことも、じっくり長く続けることもできるし、いくつになってもオシャレでいれます。
またAI時代においても、人が人に関わる仕事なので無くなることはないと思います。
ただ自分の想い一つ、困難に遭っても折れない柔軟性を持ってください。
たくさんのいい人に出会って、楽しくいい美容師人生を送りましょう。
ぜひこの業界でお待ちしています。