
自分の将来を意識し始めたのは高校2年生の頃。
高校の3年間で20種類ぐらいのアルバイトを経験したんですが、色々な仕事や社内の人間関係を目にするうちに、自分はサラリーマンには向いていないような気がして(笑)。
服飾デザイナーか美容師かで迷った挙句、服は買った方が楽しいかなと思って、美容専門学校へ進学しました。
学生時代は黙々と一人で課題をこなすタイプでしたね。
ワインディングなどの技術課題では、男子で一番を取っていました。女子には勝てなかったですけど…(笑)。
学校では社会人としての礼儀作法や接客マナーなども厳しく指導されました。
今思えば、学生時代に仕事の厳しさを教えてもらったおかげで、美容師を続けられたのかもしれません。
よく仕事は「とりあえず3年」と言われますが、僕は自分が飽き性だということを自覚していたので、一度美容師になったら、絶対に10年は続けようと決めていました。

僕たちがアシスタントをしていた時代は、ちょうどカリスマ美容師ブームで仕事が大変だったこともあり、当初30~40人いた同期は、4~5年で全員辞めてしまいました。
1年目で辞めてしまう人の理由の大半は「憧れと現実のギャップ」。
2年目以降は「仕事がしんどい」や、「もっと自分に合うサロンがあるのでは」という人が多かったですね。
1~2年目で真面目に目標や将来像を固め過ぎてしまうと、現実とのギャップが埋められず、モチベーションが保てなくなるのかもしれません。
1年目は、とにかく楽しいと思えることを一生懸命やればいい。
2年目は、自分に向いていることや得意なことに、一つでも気がつければOK。
3年目は色々と悩み出す時期なので、自分に足りないことを考えたり、人と何が違うのかを考えたりすると思います。
そうした時期を経て、4年目ぐらいで「美容師を一生続けていく覚悟」ができるんじゃないでしょうか。

独立して「FLEVE」を立ち上げたのは32~33歳の頃。
コンセプトは「お客さんをキレイにする」ことと「スタッフが成長できる店である」こと。
この2点に関して妥協しないことが、店舗経営や人材教育、すべての基本になっています。
美容師として5万人以上のお客さんを担当してきましたが、「髪を切る」だけで本当にお客さんを「キレイ」にできているのだろうかと考えるようになりました。
ヘアサロンに行っても、ほとんどの人は毛先を整えたり、前髪を少し切ったりするぐらいで、実際はそこまで大きく印象は変わらないですよね。
カラーやパーマも、社会人なら思い切った色やデザインにはできないし。
だからこそ、自分自身の人間力の向上や、心地よいと感じてもらえる空間づくりを追求してきましたが、「お客さんをキレイにする」ことに対して、もっとほかにできることがあるんじゃないかって。
メイクやマツエク、ネイル、エステなど提案できるコンテンツが多いほど、お客さんをキレイにできる可能性が高まります。
とはいえ、メイクやネイルの技術を今から僕自身が身につけるのは現実的ではないので、それぞれのプロを集めた集団を作ろうと考えたのが「FLEVE」です。

現在、オーナーとして6年目。
さらなる高みを目指すに当たり、これまでは、「いち美容師として自分が一番になりたい」という意識が強かったのですが、最近は「『日本一の美容師になりたい』、『組織を大きくしたい』と思う人を育てたい」という気持ちが大きくなってきました。
「お客さんをキレイにする」ことと「スタッフが成長できる店である」ことに対するプロ集団をどんどん作っていきたいですね。
そのためには、長らく変わっていない美容業界の教育システムを変更することも必要だと感じています。
2年前から「FLEVE」では、ヘアだけでなく、メイクやマツエク、ネイル、エステも教育カリキュラムに加えました。
「トータルビューティ」を学ぶことが、自分の武器を見つけるきっかけになり、「美容師」という言葉の概念を変えるような存在が育ってくれればいいですね。

「FLEVE」をオープンしてからの数年でメイク、マツエク、エステの知識がものすごく増えました。
最近のトレンドや最新技術に関する情報に精通するのはもちろん、どういった経緯でそれが流行るようになったのかといった分析なども行ってきました。
髪を切るのが得意な人は、それを極めてスペシャリストとして突き抜ければいい。
でもヘアやメイク、エステ、ネイルなど、すべてを網羅したジェネラリストがいてもいいんじゃないでしょうか。
美容業界にはレジェンド級のスペシャリストがたくさんいて、なかなかそこに割り込んでいくのは難しい。
それなら、その人たちとは違った方法でトップを目指す美容師やサロンがあってもいいんじゃないかと思うんです。
「お客さんをキレイにする」ことと「スタッフが成長できる店である」ことは守りつつ、これからも新しい挑戦を楽しんでいきたいですね。
今はスマホで何でも調べられるし、何でも買える。その中から何を選び、どう生かすかを美容学生の皆さんには考えてほしい。
可能性は無限だし、美容師の形も一つじゃない。
これからの美容業界を皆さんがどう変えていくのか、楽しみにしています!